2‐2‐3 知識創造の三つの特徴

 

 暗黙知を形式知に変換する知識創造プロセスに三つの特徴が存在する。

第一に、表現しがたいものを表現するために、比喩や象徴が多用される。
第二に、知識を広げるためには、個人の知が他人にも共有されなければならない。
第三に、新しい知識は暖味さと冗長性のただ中で生まれる。

以上三点について考えてみたい。

メタファーとアナロジー
個人知から組織知へ
曖昧性と冗長性

メタファーとアナロジー

 

 人が直観や洞察を明示化するために、利用する比喩的言語がある。これはメタファーやアナロジーのことであり、知識創造の初期はとくに重要である。
それを使えば立場も経験も異なる個々人が、想像力とシンボルを使ってともに直観的に理解できるのである。

 メタファーによって、人びとは既知のものを新しく組み合わせ、わかってはいても言葉にしにくいものを表現しはじめる。したがって、知識創造の初期段階でのメタファーの使用は、創造プロセスへのコミットメントを引き出すのに効果的である。

 アナロジーはメタファーと比べると、二つのアイデアあるいはモノの特徴を明らかにする方法としては、やや論理的である。それは、二つの事物のどこが似ていてどこが違うかをはっきりさせるのである。その意味で、アナロジーは純粋な想像と論理的な思考を媒介するものなのである。

 

個人知から組織知へ

 

 知識創造の第二の特徴は、新しい知識はいつも個人から始まり、その個人知識が組織全体にとって大事な知識に変換されるということである。この種の知識変換の例としては、ある優れた研究者のひらめきが会社の新しい特許に結びついたり、工場労働者の長年の経験がプロセス・イノベーションに結実したりする場合である。
個人の自発的行動とグループ・レベルでの相互作用がないかぎり、組織それ自体では知識を創ることはできない。

 個人の自発的行動とグループ・レベルでの相互作用がないかぎり、組織それ自体では知識を創ることはできない。グループ・レベルでは、知識が対話、討論、体験共有、観察などによって増幅され、具体的なものに結晶化される。

 企業における知識創造はこれまで形式知、すなわち明確に定義づけられ文章にされている知識が対象だとされていた。しかし、それと対をなす暗黙知の役割も見直されている。暗黙知とは、組織内もしくは個人が潜在的に保有する語られざる知識の一種である。形式知は言語的かつ分析的であるのに対し、暗黙知は非言語的かつ包括的であるともいえる。暗黙知には熟練や体験から得られる経験知や言い表わしがたいアイデアなどが含まれる。

 これらの暗黙知が企業にとって価値のある知的資産となるためには、形式知への転換やグループ内での共有という活動が不可欠である。そのプロセスにおいて暗黙知自身の取捨選択や改良が行なわれる。

 暗黙知と形式知はどちらが重要かあるいは重要でないかというとらえ方は意味がなく、知識は両方の知の複合体であり、相互に補完されて初めて意味を持つ。

 

曖昧性と冗長性

 

 知識創造の第三の特徴は、知識創造プロセスを促進するにはある組織的条件が必要だ、ということである。 その一つの組織的条件は曖昧さである。曖昧さは、ときに新しい方向感覚の源泉として有意義であるばかりでなく、物事に新たな意味を見いだしたり、新しく考え直すきっかけともなる。この意味で、新しい知識はカオスから生まれてくるのである。

  もう一つの組職的条件は、冗長性である。 冗長性を持つ組織を作ることは、知識創造プロセスのマネジメントにとって非常に重要である。 なぜならそれは、頻繁な対話とコミュニケーションを促進するからである。冗長性は、社員のあいだに「認識上の共通基盤」を創り、暗黙知の移転を助けるのである。 この情報共有という、冗長性によって、新しい形式知が組織全体に広まり、一人ひとりのものになるのである。

 

 

2‐2‐1暗黙知と形式知
2‐2‐2知識変換の4プロセス SECIモデル
2‐2‐3知識創造の3つの特徴
2‐2‐4知識コラボレーション
2‐2‐5知識市場